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東京地方裁判所 昭和43年(特わ)76号 判決 1968年11月14日

本籍

東京都荒川区東尾久三丁目八八八番地

住居

同都江戸川区北小岩八丁目二一番一九号

会社役員

竹腰相三

明治四一年七月一七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官川島興出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役四月及び罰金五〇〇万円に処する。

右罰金を完納しないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

但し、本裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、株式会社城北錻力印刷工業所の代表取締役として同会社の業務を主宰する傍ら、昭和三八年より、東京都荒川区町屋一丁目一番五号においてトルコ風呂「荒川トルコ」を、同都足立区千住二丁目二番地においてトルコ風呂「足立トルコ」を個人でそれぞれ経営するほか、昭和四〇年九月頃より北海道札幌市南五条西四丁目四番地において金本正ほか五名と共同でトルコ風呂「光トルコ」を経営していたものであるが、自己の所得税を免れるため、右各トルコ風呂の売上を脱漏し簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三九年分の実際課税所得金額は、別紙一修正貸借対照表(昭和三九年一二月三一日現在の分)及び別紙三税額計算書(昭和三九年分)記載のとおり一、五〇二万〇、一〇〇円でこれに対する所得税額は六七一万一、四七〇円であつたにもかかわらず、昭和四〇年三月一三日、東京都荒川区西日暮里六丁目七番二号所在所轄荒川税務署において同署長に対し、課税所得金額は一七〇万九、三〇〇円でこれに対する所得税額は一七万八、八五〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額六五三万二、六二〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の所得税を逋脱した。

第二、昭和四〇年分の実際課税所得金額は、別紙二修正貸借対照表(昭和四〇年一二月三一日現在の分)及び別紙三税額計算書(昭和四〇年分)記載のとおり二、八四二万八、八〇〇円でこれに対する所得税額は一、四三五万一、四三〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年三月一〇日、同都江戸川区逆井一丁目一五七番三号所在所轄江戸川税務署において同署長に対し、課税所得金額は三一九万二、六〇〇円でこれに対する所得税額は五七万一、二一〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額一、三七八万〇二二〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の所得税を逋脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)  全段について、

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(昭和四二年三月七日付=以下四二・三・七の如く略記、四二・九・二、四二・九・四)並びに検察官に対する供述調書

一、竹腰忠臣並びに松井友治郎の各大蔵事務官に対する質問てん未書(但し、竹腰の分は四二・三・九)

一、大蔵事務官早川博治作成の調査総勘定元帳二通、減価償却費明細表並びに所得税額計算書二通

一、押収にかかる確定申告書計四通(昭和四三年里第六六二号の一ないし四)

一、被告人作成の上申書四通(四二・一〇・四、四二・七・二一、四二・六・二四、四二・九・六)

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん未書八通並びに検察官に対する供述調書

一、被告人の当公判廷における供述

(二)  別紙各修正貸借対照表の勘定科目のうち

(1)  現金について

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん未書一通(四二・八・二六)

(2)  預金について

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(四二・八・一九、四二・八・二三、四二・八・二一)

一、大蔵事務官早川博治作成の銀行預金残高明細書

(3)  貸付金について

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(四二・八・二三、四二・九・一、四二・九・二〇)

一、椎名正夫、桜井正、金本正、伊藤啓太郎並びに滝井正の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、桜井の分は四二・三・七)

(4)  立替金について

一、竹腰秀臣並びに加藤勇の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、竹腰の分は四二・九・一九)

一、被告人作成の上申書(四二・九・八)

(5)  末収入金及び給与所得控除について

一、桜井正の大蔵事務官に対する質問てん末書(四二・九・二〇)

(6)  未収入利益分配金について

一、竹腰秀臣、椎名正夫、加藤勇、竹腰常雄、谷一賢治並びに河本雄一郎の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、竹腰秀臣の分は四二・八・二五、また谷一の分は二通)

一、被告人作成の上申書(四二・六・一七)

(7)  有価証券、有価証券譲渡益、配当源泉税並びに配当所得について

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(四二・八・二四、四二・八・二五)

一、荒川信用金庫代表理事堀江貴一、光信用金庫理事長若林広吉、東京証券代行株式会社取締役社長坂口吾郎並びに野村証券株式会社千住支店内山栄輔各作成の回答書

(8)  建物について

一、竹腰秀臣、渡辺福松、山本忠男、大原利平、渡辺文太郎、山田重男、秋山茂、斎藤好助、藤塚力並びに松下直三の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、竹腰の分は四二・八・三〇、渡辺の分は四二・五・九)

一、有限会社大槻建築士事務所代表取締役大槻昇作成の回答書

一、合資会社大和建材社水村春枝、株式会社三信商会代表取締役品田信男、有限会社日比野材木店日比野三子、株式会社国府田商店高田武俊、双葉木材株式会社土田とし並びに合資会社細川材木店代表社員細川貞美各作成の上申書

(9)  建物附属設備について

一、増田健二、豊田進、松下直三の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、内外設備興業株式会社代表取締役伊東直幸作成の「竹腰相三との取引について」と題する書面

一、有限会社山崎電機工業所代表取締役山崎岩男、スセ電業社巣瀬幸子並びに熱研興業株式会社代表取締役花立実各作成の上申書

(10)  浴場設備について

一、藤城梅雄並びに佐藤勉の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、新三立興業株式会社田口寿子作成の上申書

(11)  車両並びに車両譲渡益について

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(四二・八・二六、四二・八・三〇、四二・九・一九)

一、トヨタパブリカ東都株式会社代表取締役関勇作成の回答書

(12)  什器設品について

一、株式会社サンコー製作所代表取締役山高定三、有限会社三陽ネオン電飾代表取締役佐藤昭三並びに熱研興業株式会社代表取締役花立実各作成の上申書

(13)  借地権について、

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(四二・八・一九、四二・八・二五)

一、佐藤金次郎並びに矢吹忠三各作成の上申書

(14)  土地について

一、竹腰秀臣並びに滝井正の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、竹腰の分は四二・八・二五)

(15)  出資金について

一、竹腰秀臣、金本正並びに河本雄一郎の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、竹腰の分は四二・八・二五)

(16)  未払金について

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末三通(四二・八・三〇、四二・九・四、四二・九・一九)

一、渡辺文太郎、斎藤好助、大塚力、佐藤勉並びに松下直三の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、トヨタパプリカ東都株式会社代表取締役関勇作成の回答書

一、内外設備興業株式会社代表取締役伊東直幸作成の「竹腰相三との取引について」と題する書面

一、株式会社サンコー製作所代表取締役山高定三、合資会社大和建材社水村春枝、有限会社山崎電機工業所代表取締役山崎岩男、熱研興業株式会社代表取締役花立実、株式会社国府田商店高田武俊並びに佐藤金次郎各作成の上申書

一、押収にかかる領収書一袋(前同押号の五)、請求書一袋(同号の六)、小切手帳一冊(同号の七)並びに地料領収書一冊(同号の八)

(17)  借入金について

一、竹腰秀臣の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(四二・八・二三、四二・九・一九)

一、新井信子の大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、四二・七・一三)

一、光信用金庫足立支店吉田徳三作成の証明書

一、三枝ふじ並びに南淳一郎各作成の上申書

(18)  預金利息について

一、大蔵事務官早川博治作成の銀行預金利息計算書

(法令の適用)

被告人の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三三号所得税法附則第三五条によりその改正前の所得税法第六九条第一項に、第二の事実は昭和四〇年法律第三三号所得税法第二三八条第一項に各該当するところ、情状により懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑については、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内で科するものとし、よつてその刑期並びに金額の範囲内において被告人を懲役四月及び罰金五〇〇万円に処し、罰金不完納の際の換刑処分については、刑法第一八条第一項により金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置し、諸般の情状を考慮し、同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

別紙一

修正貸借対照表

竹腰相三

昭和39年12月31日

〈省略〉

別表二

修正貸借対照表

竹腰相三

昭和40年12月31日

〈省略〉

別表三

税額計算書

竹腰相三

〈省略〉

実際額に対する税額算出公式(簡易税額算式)

(昭和39年分) 課税総所得金額 15,020,100円×55%-1,352,000円=6,909,050円

(昭和40年分) 〃 28,428,800円×60%-2,352,000円=14,705,280円

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